Part1: 遺伝子動物改変学特論
Part2: 疾患モデル動物特論


三重大学生命科学研究支援センター・機能ゲノミクス分野・動物機能ゲノミクス部門
鈴木 昇

Part1: 遺伝子動物改変学特論
「CRISPR/Casシステムよる遺伝子改変とその応用―解説―」
Part2: 疾患モデル動物特論
「条件的がん型Rasよる癌モデル動物の開発とその応用―私たちの研究紹介―」

Part1: CRISPR/Casシステムは、2013年初頭に報告された新しいゲノム編集法であり、瞬く間に大衆化してしまった。人工ヌクレアーゼ(ZFNやTALEN)を利用した前世代の手法に比べて、きわめてインパクトが強い。非営利機関の研究者であれば、必要なベクターをわずか65ドルで入手可能であり、生物種を問わずにすぐにでもゲノム編集実験をスタートできる。すでに素早く取り入れた本邦研究者らも使いこなし成果を国際誌に発表している。オールジャパン体制であるfMENA(Frontier Medical Research by Next Generation Animal Models)コンソーシアムも始動しつつある。Part1では、山本先生のご要請のもと、本システムとその応用を概説し、新しいゲノム編集時代の幕開けに対する驚きと期待感を共有したいと思います。

Part2: 第2部では、私たちが一貫して取り組んできた活性型ras遺伝子の条件的発現がんモデルの作製とその応用について紹介します。ヒトがんの約30%において認められる変異ras遺伝子は、1982年に米国ワインバーグ博士らによってヒト膀胱がん細胞で見いだされた最初のヒトがん遺伝子である。RASタンパク質の構造や細胞内シグナル伝達カスケードにおける機能は極めて詳細に研究され尽くされている。私たちは遺伝子レベルの異常を模倣してヒトがんを再現するためにはベストのターゲットであると考え、Cre/LoxPシステムを利用して全身のどの細胞でも条件的にがん型RASを発現可能なマウス(flox-rasマウス)を作製した。N-,H-,K-Rasの3種類のタイプの特異性を明らかにするため、それぞれを同じ染色体部位にノックインで導入した。すでに骨格筋特異的に活性型Rasを発現するとヒト成人の希少がんである多形型横紋筋肉腫が発生することを初めて報告した。現在、その病態を解析中である。また、肺特異的に活性型Rasを発現するとII型非小細胞腺癌が発生するが、化学肺発癌に高感受性であるA/Jマウス遺伝背景では低感受性を示し、逆に化学発癌低感受性のB6マウスでは高感受性を示すことを見出した。この現象は、QTL解析によって、野生型K-ras遺伝子の発現差や従来報告されている化学発癌感受性遺伝子では説明がつかず、K-ras変異を修飾する新規の因子が存在することを強く示唆する。現在、さらに解析を進めている。


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