FELASAリコメンデーション2014について


自然科学研究機構生理学研究所 佐藤 浩

FELASA (Federation of European Laboratory Animal Science Associations:ヨーロッパ実験動物学会連合,19学会約24カ国のメンバーで構成-EU加盟国だけではない:脚注参照i)は,FELASA recommendations for the health monitoring of mouse, rat, hamster, guinea pig and rabbit colonies in breeding and experimental unitsを昨年2月に改定した(onlineFirst Version,紙媒体は7月発行:Lab Anim July 2014 48: 178-192, 2014)。前回2002年の改定から12年ぶりということになる。改定ワーキンググループはFELASAからの代表者6人に米国AALASからチャールス・リバー社の1人が加わり7人で結成されたものであることから,FELASA recommendationは国際標準的なものとなっている。 Recommendationをどう捉えるのか?単なる推奨・推薦・提言なのか?または要件・勧告的なものなのか?このRecommendationは,マウスやラット等を取り扱うすべてのブリーダーと研究機関のユーザーを対象としたものです。実際にヨーロッパの研究機関に実験動物を分与することになると,推奨・推薦・提言というよりも要件・勧告的な意味合いでヨーロッパの人達が検査を要求してくることを実感するはずである。しかし,建前はあくまで「推奨」ということである。

さて,今回の改定の目的は? この12年間の実験動物医学の進展に合わせたということであるが,特に,①ヘルスモニタリング(HM)の原理原則を十分に理解できる担当者の役割,②日和見感染を起こす微生物の取上げ,③センチネル動物の配置の仕方(室内レベルでのモニタリングというよりIVCのようなケージレベルでのモニタリング),④HMの結果の解釈・判断とレポート法,これら4つが今回強調されている。

マウスで推奨される検査項目としての微生物はウイルスが13種,細菌が10種,寄生虫が1種である。これら以外にオプションとしてウイルス4種,細菌・真菌6種,その他である。検査頻度も見直されている。なお,肺パスツレラ菌が前回同様3ヶ月毎のモニタリング項目として残っているのが注目される。ラットでは,ウイルスが9種,細菌が10種,寄生虫が1種である。オプションとして,細菌・真菌7種,その他である。ラットタイロウイルス(マウス脳脊髄炎ウイルス類似)は前回リストに無かったが3ヶ月毎の検査項目に入った。細菌では前回リストアップされていなかった肺パスツレラ菌が3ヶ月毎と強化された。マウス同様にラットでも取り上げられているのは,日和見感染を起こす意味合いなのか?

マウス,ラット以外のモルモット,ハムスター,ウサギの検査項目も改定された。その他,「HMプログラムのデザインに関する一般原則について」,「検査項目の選択について」,「検査と検査材料(サンプリング)用の動物について」,「測定と解釈について」なども言及があり,これらを含めて「FELASAリコメンデーション2014」を述べる予定である。 なお,今回の大会は富山大学の山本博先生の退職記念講演会を兼ねていることから,山本先生に研究や国動協,施設運営等でご助言ご指導を頂くことが多かった身であるので,先生のご活躍や足跡についても触れたい。

iFELASAのメンバーは,バルト海沿岸国で構成されるBalt-LASA(Baltic Laboratory Animal Science Association),ベルギーのBCLAS(Belgian Council for Laboratory Animal Science),クロアチアのCroLASA(Croatian Laboratory Animal Science Association),チェコのCLASA(Czech Laboratory Animal Science Association),フランスのAFSTAL(l’Association Française des Sciences et Techniques de l’Animal de Laboratoire),ドイツ&オーストリアのGV-SOLAS(Die Gesellschaft für Versuchstierkunde),ギリシャのHSBLAS(Hellenic Society of Biomedical and Laboratory Animal Science),ハンガリーのHLASA(Hungarian Laboratory Animal Science Association),イスラエルのILAF(The Israeli laboratory Animal Forum),イタリアのAISAL(Associazione Italiana per le Scienze degli Animali da Laboratorio),オランダのNVP(Nederlandse Vereniging voor Proefdierkunde),ポルトガルのSPCAL(Sociedade Portuguesa de Ciências em Animais de Laboratório),ルーマニアのARSAL(Asociatia Romana pentru Stiinta Animalelor de Laborator),ロシアのRus-LASA(Russian Laboratory Animal Science Association),スカンジナビア諸国のScand-LAS(Scandinavian Society for Laboratory Animal Science),スペインのSECAL(Sociedad Española para las Ciencias del Animal de Laboratorio),スイスのSGV(Schweizerische Gesellschaft für Versuchstierkunde),トルコのLASA – Turkey(Laboratuvar Hayvanları Bilimi derneği),そして英国のLASA(Laboratory Animal Science Association)の19学会で構成されている。


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