Sox17へテロ変異の疾患モデルへの応用

金井正美1、金井克晃2
1東京医科歯科大学 実験動物センター、2東京大学 獣医

SOX17は、SRY-related HMG box (SOX) ファミリーのサブグループFに属し、Sox2と同様に幹細胞維持に重要な役割を担うこと、また、発生過程における胚性内胚葉分化において必須であることがすでに知られている。本日は、そのヘテロ変異体(ハプロ不全)のヒト疾患モデルとしての応用と有効性についてお話ししたい。

Sox17ヘテロ変異マウスでは、胆管前駆細胞の増殖能が低下し、胎齢13.5日頃から異所性の肝外胆管の形成が起こる。また、Sox17ヘテロ胎子では、胆囊・胆管上皮細胞は、管腔内へと剥離し、胆管の上皮構造が破綻すること、さらに、脱落した上皮細胞塊が下流の肝外胆管、総胆管部に詰まり、胆道閉塞を誘発することが明らかとなった。Sox17遺伝子の胆嚢組織自律的な形成過程への関与を理解するために、胆囊・胆管原基の器官培養系を用いて、胆嚢・胆管前駆細胞でのSOX17の詳細な機能解析を行った結果、野生型に比べ、Sox17ヘテロマウスでは、遠近軸に沿って胆管原基の伸長率の低下、胆管上皮の基底膜の部分的な断片化と細胞自律的に腔内への上皮細胞の脱落が観察された。野生型とSox17ヘテロ変異での胆嚢・胆囊管の網羅的なマイクロアレイ発現解析を行ったところ、Sox17ヘテロ変異の胎子胆嚢では、胆囊管型の遺伝子発現パターンに変化が認められ、領域特異性の消失を伴って、胆嚢炎が発症することを見出した。Sox17ヘテロ変異での胆囊・胆管原基の形態形成における胆嚢管形成の分子基盤変化についても紹介し、胆管上皮の破綻と胆道閉鎖症の分子メカニズムの関連についても考察したい。


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