「B細胞の免疫寛容と自己抗体産生のCD19による調節」


稲沖 真,佐藤伸一(金沢大・医・皮膚),
Thomas F. Tedder(Duke大学・医療センター・免疫)


 CD19はB細胞に発現し,免疫グロブリンリセプターを介するシグナルの閾値を調節する分子である。CD19を正常マウスの3倍発現するヒトCD19トランスジェニックマウスではB細胞の機能が亢進し,血清中の免疫グロブリンや自己抗体の増加が認められる。今回我々はB細胞の免疫寛容の制御と自己抗体産生におけるCD19の役割を解明するため,B細胞の免疫寛容モデルである可溶性ニワトリ卵白リゾチーム(sHEL)と抗HEL免疫グロプリンリセプター(MD4)のダブルトランスジェニックマウスとヒトCD19トランスジェニックマウスを交配し,得られたマウスを解析した。2ヵ月齢のsHEL/MD4ダブルトランスジェニックマウスのB細胞は機能が低下し自己抗体である抗HEL抗体をほとんど産生せずanergyの状態であったのに対し,CD19を過剰に発現するsHEL/MD4トランスジェニックマウス(sHEL/MD4/hCD19マウス)の40%において,B細胞のanergyが破綻し抗HEL抗体の産生が認められた。さらに5ヵ月齢のsHEL/MD4/hCD19マウスでは,それらのすべてにおいて抗HEL抗体の産生がみられた。また,自己抗体を産生していないsHEL/MD4/hCD19マウスをHEL+アジュバントあるいはアジュバント単独で免疫すると抗HEL抗体の産生がみられ,その抗体量は免疫されたsHEL/MD4マウスより有意な高値を示した。以上の結果からCD19の過剰発現は抗原リセプターを介するシグナルの閾値を下げることにより免疫寛容と自己免疫のバランスを自己免疫に傾けることが示された。

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