免疫と炎症の制御:動物モデル実験から学んだこと


高津聖志
富山県薬事研究所,富山大学大学院医学薬学研究部


免疫系は外来病原微生物や外来抗原の侵入に対する宿主の防御,がん細胞の発生・増殖の監視に欠くことのできないシステムであり,神経系や内分泌系とともに,生体の高次機能の調節に必須のものである。生体は外来病原体や抗原暴露に対応し,自然免疫系と獲得免疫系を活性化して,病原体や抗原を排除と生体の恒常性を維持する。自然免疫のエフェクター細胞は病原体由来の糖鎖,脂質,タンパク質,核酸などを識別し,感染早期の防御系を構築するのみならず,ペプチド抗原に対するT細胞依存性の獲得免疫を効率よく惹起する。免疫や炎症に関与するエフェクター細胞の時空間的な活性化機構や調節作用を明らかにし,それらを制御する新規薬剤の探索が期待される所以である。

私は結核菌がアジュバント活性を示し免疫応答を幅広く調節することに興味を抱き,そのメカニズムを知りたくて研究を始めた。その研究過程でIL-5とめぐり合い,IL-5による抗体産生の増強,好酸球の増殖・分化の促進のメカニズムに興味を抱くようになった。最近10年余りは,結核菌感染細胞の同定やそれに応答するT細胞の動態に注目している。結核菌の分泌するAg85B はTh1細胞の生成を惹起するのみならず,共存する抗原に対するTh1応答や細胞傷害性T細胞の生成を促進することを明らかにしてきた。これらの研究において,多くの遺伝子改変マウスを利用してきた。本講演では,免疫バイオ研究における実験動物の有用性に関し,我々の研究経験を踏まえて話題を提供したい。
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