脂肪肝の成因としてのインスリン抵抗性と小胞体ストレスの意義


金沢大学フロンティアサイエンス機構
太田嗣人

先進国における成人の少なくとも4人に1人は脂肪肝と推定される.過栄養時代の現代社会では,腹部肥満・耐糖能異常・脂質異常症が集積するメタボリックシンドロームの増加により非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は増加の一途をたどっている.長らく良性疾患として看過されてきた「脂肪肝」の20%以上は脂肪化に続いて炎症・線維化が起こる脂肪肝炎(NASH)へと進展し,原因不明の肝硬変・肝癌の発生母地であることが明らかとなってきた.脂肪化した肝臓になぜ炎症が起こるのか?という進展機構を解明することはNASHを克服するための重要な課題である. NASHはメタボリックシンドロームの肝表現型として認識され,両者に共通する病態としてインスリン抵抗性が重要な役割を演じていることが推測されてきた.私は,ヒトの病態を反映したNASHモデル動物を確立し,インスリン抵抗性がNASHの病態進展を大きく加速させることを明らかにした.また,最近では,インスリン抵抗性の上流病態のひとつとして2型糖尿病をはじめとする生活習慣病の病態に関与する小胞体ストレスが脂肪肝を促進することを見出した.

本日は,過栄養による肝脂質代謝の破綻とその結果生じる脂肪肝の病態にインスリン抵抗性と小胞体ストレスの両者が関与するという実験動物を用いた研究内容を中心に話題を提供したい.


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