糖尿病モデルラットを用いた量的遺伝子座解析


国立国際医療センター研究所 ヒト型動物開発研究室
岡村 匡史

糖尿病は遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合い、その病態は非常に複雑な多因子疾患である。そのため、交配や飼育条件の操作により、遺伝因子と環境因子の効果を経時的に調べることができるモデル動物は、糖尿病研究において非常に有用なツールである。

新しい糖尿病モデルであるLEA/Sendaiラットでは、加齢と共に膵島の線維化が雄のみで進行し、経口糖負荷120分後の血糖値が200〜300mg/dlの軽症糖尿病を発症する。血中インスリン濃度は正常群に比べ有意に低いが、インスリン抵抗性は見られなかった。先天的に雌雄とも若齢からインスリン分泌不全に起因する耐糖能低下が見られ、雄の12週齢では、膵島の一部で炎症像および線維化が観察された。これらの結果から、LEA/Sendaiラットは先天的な耐糖能異常に、膵島の線維化によるベータ細胞の減少が加わることで、耐糖能が悪化することがわかった。

LEA/Sendaiラットは、今までに報告されている糖尿病モデルラットとは異なる特徴を示す、インスリン分泌不全を主徴とした非肥満型糖尿病モデルラットである。このラットが有する病態の遺伝因子を同定するために、F2交配群を用いた量的形質遺伝子座(Quantitative trait loci: QTL)解析によるポジショナルクローニングを進めている。多因子疾患のポジショナルクローニングは多大な労力を必要とするが、最近のゲノムデータベースの整備により、現実的なものとなりつつある。本講演では、このラットの特徴と共に、各病態に関するQTL解析について最近の知見を含めて紹介したい。


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