TLRと会合分子による自然免疫制御
富山大学大学院医学薬学研究部(医学)・免疫バイオ・創薬探索研究講座 長井 良憲
自然免疫系は,ヒトやマウスだけでなくリンパ球を持たないハエなどの昆虫,さらに植物など広範な種に保存されている生物の生存に重要な感染防御機構である。自然免疫系の役割は,抗体(免疫グロブリン)のような特異的な病原体認識機構は持たず,病原体に共通の構造を認識して,病原体を捕食,攻撃,排除する。自然免疫系において病原体の認識に中心的な役割を果たしているのがToll-like receptor (TLR)である。代表的なTLRリガンドであるLPS(エンドトキシン)に対する応答はTLR4が司るが,LPSはTLR4には結合しない。演者らは,TLR4の細胞外部分に会合する分泌タンパクMD-2を発見し,MD-2がLPSの応答に必須であることを個体レベルで明らかにした。近年の結晶構造解析から,MD-2に直接LPSが結合することが報告されている。すなわちMD-2はLPSを認識する役割を,TLR4は細胞内にシグナルを伝える役割を持つ,というように役割分担があると考えられる。このようにTLRによる病原体認識機構は単純なものではなく,巧妙かつ複雑なものである。さらにTLRは,病原体などの異物を認識するだけでなく,炎症などによって生じる自己の成分にも反応することが報告されている。また自己免疫疾患やアレルギー性炎症,肥満等の病態にTLRやMD-2などの関連分子が関わることも示唆されている。本講演では,TLRとその会合分子による自然免疫制御を概説し,疾患との関連,TLRを標的とした治療戦略・創薬研究について述べてみたい。
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