国内の飼料資源を活用した畜産物生産

石川県立大学 生産科学科 動物栄養学研究室
石田 元彦

わが国の畜産は,乳,肉,卵などの良質なたんぱく質を含む食材を生産し,日本人の健康増進に寄与してきた。最近では海外から安価な飼料を輸入することが多くなり,飼料の自給率は25%にまで低下している。しかし,アメリカ合衆国でのトウモロコシからのエタノール生産の開始,中国,インドなどの新興国の経済発展に伴う畜産物需要の高まり,飼料生産国であるオーストラリアでの旱魃などの要因から,今後飼料を安定して輸入することが困難になっている。一方,わが国の夏は高温多湿な気候条件にあり,草が繁茂しやすい。河川敷,堤防,耕作放棄地には草が豊富に存在している。牛,めん羊などの反芻家畜はこれらの草資源を飼料として利用でき,米ぬか,くず米,くず麦などの農産副産物や豆腐粕,アン粕などの食品製造副産物を穀類などの代わりに利用できる。国内の資源を活用した反芻家畜からの畜産物生産を進める必要がある。

このような背景から,私どもの研究室は石川県河北潟干拓地において,耕作放棄地に自生するヨシを収穫して牛の飼料とするとともに,水路法面に雌めん羊を放牧して除草と同時に子羊を生産することを目的とした研究に着手した。これまでに,耕作放棄地のヨシの収量と化学成分組成を調査し,牛の飼料として利用できる可能性と機械収穫できることを見出した。また,めん羊の放牧によるセイタカアワダチソウの除草効果も確認できた。さらに,石川県白山市の耕作放棄田に肉用繁殖雌牛を放牧することによって里山の活性化を図ろうという取り組みも開始した。本講演では,これらの研究成果の概要について述べる。


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