GFPマーカーによる効率的なトランスジェニックマウス系統の樹立


福井医大・動物施設・第一解剖

小泉 勤、玉巻信章


 受精卵前核への遺伝子微量注入法はトランスジェニックマウス作製の最も一般的で確実な方法であるが、生まれたマウスの10%から30%が遺伝子導入されたトランスジェニック動物にすぎない。従ってトランスジェニックマウスの系統樹立にはトランスジーンを持つマウス個体の選別が不可欠である。トランスジーンの確認はPCRあるいはドット、サザンブロット法が用いられるが、最も簡単迅速なPCR法でもDNAの抽出、PCR, 電気泳動など結果が出るまで約1日を要し、かかる労力、経費も少なくない。我々はより簡便にトランスジーンの確認を行うために目的とする導入遺伝子の下流にGFP遺伝子をつないだ遺伝子コンストラクトを作製し、これをB6C3F1マウスの受精卵前核に微量注入し、トランスジェニックマウスを作製した。そして産子でのGFPの発現の有無によりトランスジーンの有無を判別する方法を検討した。GFPは発光にcofactor、発色団、基質が不要で、固定などの前処理も不要であるため、マウスを生かしたまま長波長の紫外線を当てることでGFP発現の有無が確認できる。実験ではGFPの検出と同時に尾から抽出したDNAでPCR法による導入遺伝子の検出を行った。その結果、GFP(+)マウスではトランスジーンのバンドも検出され、GFP(−)マウスではトランスジーンのバンドはみられなかった。また、ファウンダーマウスとC57BL/6マウスとの交配して得られたF1マウスについて解析したところ、導入遺伝子とGFPマーカー遺伝子は子孫に安定して伝達された。これらのことからGFP発現の有無によりトランスジーンの有無を確認できるものと思われる。また、今回用いた遺伝子コンストラクトは着床前の胚でもGFPは発現し、胚の発育に悪影響を及ぼさなかったことから、GFPを発現している胚のみを選びレシピエントマウスに移植することにより、より効率的にトランスジェニックマウスの作出ができるものと思われた。


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