ネコ免疫不全ウイルス(FIV)TM-2株実験感染ネコ血漿中のFIV抗体検査キットによる検査成績の比較


勝山一輝1,山本呂生子1,中村政美1,栗山政彦1,割谷孝貴1, 2,芦田佳典2, 山本 博1
1 富山医科薬科大学動物実験センター,2 富士薬品工業(株))


[目的]
 Speed FIV(Speed),Speed DUO FeLV-FIV(Speed DUO),ウイットネスFIV(ウイットネス)および スナップFeLV/FIVコンボ(スナップ)の4種のFIV抗体測定用キットを用いてTM-2株を実験感染させたネコを経時的に採血した血漿を調べ,各々のキットにFIV抗体検出感度や判定状態に差があるか検討した。

[材料および実験方法]
検査キット
 以下の4種の検査キットを実験に供した。
  1) Speed FIV(BIO VETO TEST:フランス):FIV抗体検出用キット
  2) Speed DUO FeLV-FIV(BIO VETO TEST:フランス):FeLV抗原/FIV抗体同時検査用キット
  3) ウイットネスFIV(日本全薬工業(株)):FIV抗体検出用キット
  4) スナップ・FeLV/FIVコンボ(アイデックス ラボラトリーズ(株)):FeLV抗原/FIV抗体同時検査用キット
供試検体
 FIV(TM-2株)を実験的に感染させた4匹のネコおよびコントロールネコ2匹の計6匹(以後No.1〜No.6とする)から継時的にヘパリンを用いて採血し,分離したネコ血漿を−30℃で保存し実験に供した。
  [結果および考察]
 用いた全キットでFIV抗体が検出できた(表2)。しかし,検出感度および判定の容易さに差が見られた。一部について述べると,スナップは,コントロールスポットにはっきりと色があらわれるので判定は容易であったが,ネコNo.4の4w時において,他の3種類のキットはFIV抗体陽性バンドが薄く検出できた(陽性)のに比べて,陰性であったことから,SpeedやSpeed DUOで薄く陽性バンドがあらわれるような結果が出る検体を用いた場合,検出できない場合があると思われた。また,検査したすべてのネコにおいてもSpeedやSpeed DUOの検出バンドが,ウイットネスの検出バンドの色より濃くはっきりと出ることから,SpeedやSpeed DUOはウイットネスでは判定しにくいような時期でも,判定が可能ではないかと思われた。
 スナップはエライザ法,他の2つは金コロイド法がキットの原理である。また,使用抗原も異なっており(表3),さらには使用されている抗原量は不明である。このように,各種キットに採用している検査方法あるいは使用抗原によって判定感度に差が出ている可能性も考えられるが,現在のところ不明である。
 今回の試験に供試したネコ血漿は,同種の抗原を感染させたMYA-1細胞を用いて間接蛍光抗体法により抗体(価)を確認した。その結果,表4のようにFIV抗体が定量的に確認された。また,その抗体価は感染後の経過とともに上昇し135週前後に最高になり,その後徐々に低下していた。抗体価の低下はネコの免疫能の低下(免疫不全)や抗体の性状の変化など考えられるが,今回の実験では原因は不明である。
[まとめ]
 今回使用したキットはすべて感染後しばらく時間が経った後抗体価の上昇したときには問題なく感染を確認出来るが,感染初期(数週後)で抗体価が低い場合(たとえば蛍光抗体法で10倍〜40倍前後)には反応が弱くて判定が難しいこともあることがわかった。また,一部の検査キットでは陰性と判定されることもあった。今回の私達の検査ではSpeed,Speed DUO がFIV感染初期の感染を診断する場合すぐれていると思われた。

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