慢性関節リウマチの動物モデル
遊道和雄1, 松野博明1, 宇月美和2, 中澤不二雄1, 澤井高志2, 木村友厚1
(1富山医科薬科大学・医・整形外科, 2岩手医科大学病理学第1)
【目的】慢性関節リウマチ(RA)において、マウスを動物モデルに用いた薬効検定の結果が実際にヒトに同一薬剤を投与した時の薬効としばしば異なることがある。そこで、出来る限りヒトとの違いが少ない動物モデルが開発出来ないかと考え、SCIDマウスにヒトRA骨軟骨・滑膜組織を移植したSCID-Hu RAgマウスの作成を試みた。さらに、このRAモデルマウスを用いて抗リウマチ薬の骨関節組織への影響を組織学的に検討した。
【結果】手術時に採取したRA患者由来の骨軟骨を含む滑膜組織をSCIDマウスの背部皮下に移植したSCID-Hu RAgマウスを作成した。組織は移植後8週間経過しても(最長1年)生着していることが確認された。8週目に摘出した移植組織の検討から、RA滑膜組織のみならず軟骨・骨組織も移植可能であること、移植した滑膜の形態は移植時のdonorヒトRAの組織と変化なく存在し、かつリンパ球等の免疫担当細胞浸潤も観察された。しかもそのリンパ球の分布はCD4, CD8, CD20などの各種サブセットで確認してもdonorと同じことが確認出来た。さらに滑膜には、サイトカイン(IL-1, IL-6, TNF-a)も確認されたばかりでなく、各種軟骨破壊性の酵素(MMP-1, MMP-3, MMP-9、ヒアルロニダーゼ)も観察可能であった。また関節の破壊部においては、破骨細胞も観察された。免疫染色の結果、これらの細胞は全てヒト由来の細胞であることが証明され、移植組織は移植後もヒトの関節内に存在する時と同様に、マウスの体内でもセルサイクルを介して増殖していることも確認された。本モデルを用いた抗RA薬の薬効評価は、RA患者における薬物療法の臨床成績に近い結果を示した。
【結語】SCIDマウスに移植されたRA患者の関節組織は、滑膜・骨軟骨組織に至るまでdonorであるヒトの組織とほとんど違いがないことから、我々が作成したSCID-Hu RAgマウスはRAの骨関節病態の研究するモデルと適しており、加えて抗RA薬剤のスクリーニングに有用なモデル動物と考える。
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