遺伝子改変動物と最近の動物飼育装置の進歩


今村 英成
(Animal Health Care Consultant 獣医師)


 Y2Kの正月早々、人間の全遺伝情報の90%が解明されたというニュース。アルツハイマー病に関係する遺伝子が21番染色体上にあることがわかったとも。全遺伝情報が完全に解明されるのは2010年といわれていたが最近2003年に修正された。それがさらに加速度がついたもよう。いっぽうマウスの遺伝情報も刻々と解明。病気に関係する同じ遺伝子をマウスとヒトが共有していれば、マウスで行った実験結果がダイレクトにヒトに応用できる。マウスが持っていなければ、ヒトの遺伝子をマウスに入れてやればよい。すなわち、遺伝子改変動物のバイオメディカル研究への利用だ。このように21世紀は生命科学が加速度的に進展する時代。
 遺伝子改変動物の利用が世界的に増加。その飼育管理にもなにか新しい側面があるのだろうか。遺伝子改変動物といえども特別な飼い方があるわけではないだろう。強いて言えば逃がさない工夫ぐらい。しかし、実際面ではいろいろな問題が起きてきている。とりわけ1)従来のように信頼できるブリーダーから高品質の動物を導入するのではなく、品質的に雑多な動物が1つの動物室に混在するおそれがある。動物間の交差汚染をどうして防ぐか。2)従来のように実験に必要な動物をブリーダーから導入するのでなく、維持・繁殖用の動物が必要になる。従来の施設でこの増加した動物をいかに収容するか。この2つが大きな問題となっている。
 そこで脚光を浴びているのが個別換気式ケージ・システムだ。個別換気式ケージ・システムの利点と限界を考察し、21世紀の実験動物飼育管理を動物福祉、高質の研究および職員の安全の観点から展望してみたい。


北陸実験動物研究会ホームページに戻る