麻酔薬に対する感受性に関わる量的形質遺伝子座(QTL)のマウスでの解析


小泉 勤
(福井医科大学動物実験施設)


 アルコール、ハロゲン化合物、ステロイドなどさまざまな物質が全身麻酔作用を示すが、全身麻酔薬は非常に多くの作用標的が関与していると考えられており、分子レベルでの麻酔薬の作用機序は解明されていない。麻酔薬に対する感受性の異なる動物モデルを用い、感受性の個体差に関わる遺伝子を明らかにする研究は全身麻酔の作用メカニズム解明の有力な方法と考えられる。古くから全身麻酔薬に対する感受に個体差、系統差があり、感受性形質が遺伝的影響を受けることが知られている。そしてマウスとラットでは既存の近交系のほかに、薬物に対する感受性を指標にアウトブレッドコロニーから選抜交配により感受性の異なる系統がいくつか樹立され、研究に用いられている。しかしながら、麻酔に対する感受性は量的形質であり、複数の量的形質遺伝子座(Quantitative Trait Loci(QTL))が関与することから遺伝解析は容易ではなく、最近まで解析が進んでいなかった。麻酔薬ではこれまでプロポフォール麻酔に対する感受性に関する1つのQTL遺伝子座(Lorp1)がマウス、またショウジョウバエでハロセン麻酔に対するQTL遺伝子座が報告されているに過ぎない。 演者はアウトブレッドマウスから選抜交配により麻酔薬に対する感受性の異なるモデルの樹立と、近交系マウスのスクリーニングの両面から麻酔薬感受性の遺伝解析を検討している。 これまでエタノール、ウレタン、トリブロモエタノール、ペントバルビタール、ケタラ−ル、プロポフォール、ジアゼパムに対する感受性について検討したところ、ICR由来の近交系(IAI, IQI)とC57BL/6, A/Jの間で、ケタラ−ル以外の薬物に対する感受性に顕著な系統差が見られた。これらのマウスを用いた交配実験を行い、麻酔薬への感受性に関わるQTL遺伝子座の解析を行っている。これまでプロポフォールの感受性に関する新たなQTL遺伝子座、ペントバルビタール、ジアゼパムの感受性に関するQTL遺伝子座を見出している。

北陸実験動物研究会ホームページに戻る