「隔離飼育ストレスによるペントバルビタール睡眠の変化とその機序」
富山医科薬科大学・和漢薬研究所・生物試験部門
助教授 松本 欣三
現代はストレス社会と呼ばれるように、我々は好むと好まざるとに関わらず様々なストレスに晒される機会が増加している。こうしたストレスは心身症や神経症の発症に深く関わるほか、不眠などの睡眠障害を引き起こす要因にもなることが知られているが、その発症メカニズムについては明らかではない。
我々はこれまで実験小動物に情動的ストレスを負荷する方法の一つであるコミュニケーションボックス法1）や小動物を個別に長期間隔離飼育することにより一種の社会心理的ストレスを負荷する方法を用い， 発現する中枢機能変化について薬理学的に検討してきた。その結果， これまでにある種の薬物誘発睡眠が情動ストレスにより著明な影響を受けること2,5）， またその背景に脳内の内在性物質，特にGABA-A受容体機能を修飾する物質の変動が関与していることを示唆する成績を得た3-6）。そこで薬物誘発睡眠， 特にペントバルビ夕ールで誘発されるマウスの睡眠時間が長期間の隔離飼育ストレスによって顕著に短縮される機序について検討した我々の実験成績を紹介したい。
References
1） 小川暢也ら：心理的ストレス潰瘍の実験モデル：条件情動反応の伝播を用いたCommunication Box法の確立と向精神薬の作用．精神薬治療基金研究年報15：22−29；1984．
2) Ojima, K. et al.: Hyperactivity of central noradrenergic and CRF systems is involved in social isolation-induced decrease in pentobarbital sleep. Brain Res. 684:87-94; 1995.
3) Matsumoto, K. et al. Neurosteroidal modulation of social isolation-induced decrease in pentobarbital sleep in mice. Brain Res. 708:1-6; 1996.
4) Ojima, K. et al.: Flumazenil reverses the decrease in the hypnotic activity of pentobarbital by social isolation stress: Are endogenous benzodiazepine receptor ligands involved? Brain Res. 745:127-133; 1997.
5) Matsumoto, K. et al. : Central corticotropin-releasing factor and benzodiazepine receptor systems are involved in the social isolation stress-induced decrease in ethanol sleep in mice. Brain Res. 753:318-321; 1997.
6) Matsumoto, K. et al. : Flumazenil but not FG7142 reverse the decrease in pentobarbital sleep caused by activation of central noradrenergic systems in mice. Brain Res. in press.
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