平成14年から15年初に富山医科薬科大学において発生したマウスのMHV汚染とその対応について
和泉宏謙,上坂浩実,清水友子,吉田勝美,奥野政弘,李 成一,山本 博
富山医科薬科大学・生命科学実験センター・生物資源開発分野
実験動物の病気や感染症は,実験成績に大きく影響を及ぼす要因の1つである。そのため,精度の高い実験結果を得る上で,定期的な微生物モニタリングは欠かせない。
富山医科薬科大学・生命科学実験センター・生物資源開発分野において,これまでの10年間は,異常動物や利用者提供(実験後の残り動物や血清)を中心に検査を行ってきたが,不十分であったため,平成14年度から施設で購入したモニター動物を用いての定期的な微生物モニタリングを開始した。モニター動物を一定期間飼育室で同居飼育し,血清を採取し,ELISAキット(モニライザR 「A ,実験動物中央研究所)による検査を行った結果,平成14年9月,平成14年12月の2回の検査結果において,一部の飼育室のモニターマウスからマウス肝炎ウイルス(MHV)陽性反応が出た。MHVが施設内に潜んでいる疑いが生じたため,施設利用者のマウスを飼育室毎に調べたところ,施設3階のマウス一般飼育室中心に感染が広がっていることが確認された。そこで,施設利用者との会議を開き,対策を検討し,終息に至るまでの約4ヶ月間,清浄化へ向け取り組んだ。感染マウスの処分や隔離,感染が確認された部屋の清掃・消毒等による部屋の使用の一時中止など,研究や管理に大きな影響を与えた。
今回のMHV感染事故を契機に,施設の飼育管理方法や導線等についての見直しを行い,利用者の施設利用方法等について新しい基準を定めた。施設外からの感染症等の侵入を防ぐために利用者各自の研究室での飼育動物の検査についても動物実験委員会により指導を行った。また感染発生に早急に対応できることと,人獣共通感染症に対応するために,“動物実験における感染防止マニュアル”を動物実験委員会において作成し,今後の対応の基準とした。感染を防ぐため,また感染が発生した際にも早期に発見し,その広がりをできるだけ少なくし,素早く対応するためにも定期的な微生物モニタリングが必要である。
またいつ感染が発生するか予測できない感染症の流行に対して,今回の経験は非常に大事なことであり,これからも微生物学的な統御レベルの向上に取り組み,施設の体制を整えていかねばならない。
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