2003年の鳥獣保護法改正による小型哺乳類の捕獲などの規制とその後の現状について
横畑 泰志
富山大・理・生物圏環境科学・生物圏機能
鳥獣保護法(正式には「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」)は,大正7年に制定された後 31 回に及ぶ改正を経て今日に至っているが,2003年4月の改正において従来のカタカナ書きの条文がすべてひらがな書きに改められ,名称も「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」とされるなど,大幅な改正が行なわれた。特に,小型哺乳類の研究者に関係の大きい変更点として,従来調査研究のための捕獲や飼育に規制のなかった野生食虫類およびネズミ科齧歯類についても,それらの行為に大型哺乳類や翼手類,鳥類と同様の学術捕獲の申請手続きが必要になった。この改正点は調査研究や教育のために小型哺乳類を扱う多数の関係者に大きな影響を与えるとして,日本哺乳類学会の関連2委員会(哺乳類保護管理専門委員会および種名・標本検討委員会)はこの問題に関する作業部会を設け,対応を行った。まず,同学会員を中心に関係者 1000 人以上を対象に電子メールによるアンケート調査を行ない,小型哺乳類の調査,研究,教育活動の実際と今回の改正に関する意見の集約を行なった。その結果,小型哺乳類自体を研究の対象とする関係者の多くはその保護などの立場からこの改正に基本的に賛成であり,手続きの可能な限りの簡略化が強く望まれていることなどがわかった。しかし,改正点には個々の罠への多くの表示事項の義務づけのような,小型哺乳類に対して非現実的な内容が見られるなどの問題点が含まれていたので,環境省に要望を出し,いくつかの点については改善をみた。その後2年半が経過しているが,今のところ大きな問題は発生していない。しかし,1) 県によって許可の容易さにかなり差があり,県をまたぐ研究計画に困難な場合がある,2) 捕獲後の報告が義務づけられているが,その内容が簡単なため分布記録として活用できない,などの課題が生じている。
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