甲状腺機能低下症モデルgrtマウスの原因遺伝子の解析
佐々木 宣哉
北海道大学大学院獣医学研究科実験動物学教室
DW/J-grt (growth-retard)マウスは先天性甲状腺形成不全を起因とする成長遅延を発症するマウスである。甲状腺ホルモン濃度低下、TSH濃度上昇といった典型的な原発性甲状腺機能低下症を呈し、解剖学的には甲状腺濾胞細胞の減少に伴う甲状腺の縮小が見られる。これまでgrtマウスはTSHの刺激に対するTSHレセプターの活性化が喪失している事、さらに、その遺伝様式は常染色体単一劣性遺伝であり、連鎖解析法により原因遺伝子は第5番染色体上に座位することを明らかにしてきた。マウス第5番染色体及びヒト、ラット染色体の相同性を示すsyntenic regionには、甲状腺機能低下症の原因遺伝子座はマッピングされておらず、新規の原因遺伝子の存在が示唆された。そこで原因遺伝子の同定を試みたところ、特定蛋白のチロシン残基に硫酸基を転移する活性をもつtyrosylprotein sulfotransferase 2(Tpst2)にアミノ酸置換を伴う変異を見出した。本講演では、grtマウスの病態メカニズムと翻訳後修飾のひとつとしてチロシン硫酸化について紹介したい。
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