金沢大学動物実験規程

(基本原則)
第1条 この規程は,金沢大学(以下「本学」という。)における実験動物の飼養・保管及び動物実験等の計画及び実施に関し,必要な事項を定めることにより,動物実験等が,動物実験の3原則(3R; Replacement, Reduction, Refinementをいう。)に則して科学的かつ倫理的に適正に実施されるとともに,動物の飼養保管及び動物実験等に関わる危害の防止並びに環境の保全を図ることを目的とする。
2 本学における動物実験等は,本規程に定めるもののほか,「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号),「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年環境省告示第88号,以下「飼養保管基準」という。),「動物の処分方法に関する指針」(平成7年総理府告示第40号),「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」(平成18年文科省告示第71号,以下「基本指針」という。)に基づき,「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」(平成18年日本学術会議,以下「ガイドライン」という。)の趣旨を踏まえて行うものとする。

(適用範囲)
第2条 この規程は,本学において行われるすべての動物実験等に適用する。
2 動物実験責任者は,動物実験等を外部機関で行う場合や当該機関に委託して行う場合においては,当該機関の監督官庁の定めた動物実験等に関する基本指針に基づいて行うものとする。
3 生態観察のみを行うことを目的とした動物の飼養・保管及び野外における生態観察等の実験については,本規程によらず「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号),「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」(平成14年法律第88号)に基づいて行うものとする。

(定義)
第3条 この規程における用語の意義は,飼養保管基準,基本指針及びガイドラインに準じ,次に掲げるとおりとする。
(1) 動物実験等 動物を教育,試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供することをいう。
(2) 飼養保管施設 動物を恒常的に飼養若しくは保管又は動物実験等を行うために設けられた施設・設備をいう。
(3) 実験室 飼養保管施設以外で実験動物に実験処置を行い,48時間以内の一時保管を行うために設けられた動物実験室をいう。
(4) 施設等 飼養保管施設及び実験室をいう。
(5) 実験動物 動物実験等の利用に供するために施設等で飼養又は保管している動物のうち,哺乳類,鳥類及び爬虫類をいう(輸送中を含む)。
(6) 動物実験計画 動物実験等を行うために事前に立案する計画をいう。
(7) 動物実験実施者 動物実験等を実施する者をいう。
(8) 動物実験責任者 動物実験実施者のうち,個々の動物実験計画に係る業務を統括する者をいう。
(9) 管理者 施設等と飼養又は保管されている実験動物の管理に関して,所属部局における責任を有する者として法人に委嘱された部局長等(研究域にあっては系長等を含む。)をいう。
(10) 実験動物管理者 実験動物の専門家(大学等において実験動物学を修得した者又は実験動物の飼養及び動物実験について十分な知識及び経験を有する者をいう。)であって,管理者を補佐し,実験動物及び飼養保管施設の管理を担当する者をいう。
(11) 飼養者 実験動物管理者又は動物実験実施者の下で実験動物の飼養又は保管に従事する者をいう。
(12) 指針等 第1条第2項に掲げた基本指針及びガイドラインをいう。

(動物実験委員会の設置)
第4条 学長は,本学における動物の飼養又は保管及び動物実験等の適正な実施に関する業務を統括する。
2 この規程の適正な運用を図るため,金沢大学動物実験委員会(以下「委員会」という。)を置く。
3 委員会に関し必要な事項は,別に定める。

(施設及び設備)
第5条 動物実験等及び動物実験等に供するための飼養又は保管(48時間以内の一時的なものを含む)は,定められた施設等においてのみ実施することができる。
2 動物を飼養又は保管するには,動物の生理,生態,習性等に応じた適切な飼養保管施設を備えなければならない。
3 管理者が実験動物を飼養又は保管する飼養保管施設を設置するには,当該施設に実験動物管理者を置いて,所定の様式により,学長に当該施設設置の承認を得なければならない。
4 管理者が実験動物以外の脊椎動物に属する動物を飼養又は保管する場合にあっては,所定の様式により,学長に当該施設設置を届け出るものとし,実験動物管理者の選任は要しない。
5 管理者が実験室を設置するには,所定の様式により,学長の承認を得なければならない。
6 管理者は,実験動物及び施設等の適正な管理・運用を図ると共に,動物実験等の遂行に必要な施設等の改善に努めること。
7 管理者は,飼養保管施設への実験動物の導入と飼養又は保管の状況,不測の事態の発生及び対処の状況等を記録するとともに,所定の様式により,毎年次,学長に報告するものとする。
8 この規程に定めるもののほか,法が定める特定動物,特定外来生物等を飼養又は保管し,又は動物実験等に供する場合にあっては,関連法令による手続きを沈滞なく行うものとする。
9 施設等を廃止しようとする場合は,管理者が所定の様式により学長に届出るとともに,飼養又は保管中の動物を他の飼養保管施設に譲り渡すよう努めること。
10 施設等の設置要件,申請・届出及び年次報告に関し必要な事項は,別に定める。

(実験計画の立案)
第6条 動物実験実施者は,動物実験計画の立案にあたり,研究の目的,意義及び必要性を十分に検討するとともに,徹底した事前調査を行い,すでに十分な知見の得られている事実を単に再確認するための動物実験等は避けなければならない。
2 動物実験実施者は,研究目的を検討し,代替法も考慮して実験系を実験動物以外に求めるよう努めなければならない。
3 動物実験実施者は,適正な実験動物の選択(動物種,系統,遺伝学的品質及び微生物学的品質に関する選択をいう。),飼養条件及び実験方法の検討を行い,使用する動物を研究目的に必要な最小限度にとどめなければならない。
4 動物実験実施者は,実験方法を検討する際には,実験処置が実験動物に与える苦痛の程度を判断し,これを可及的に軽減する等,倫理的な面の配慮を払うものとする。
5 動物実験実施者は,苦痛度の高い動物実験計画を立案する場合においては,人道的エンドポイント(激しい苦痛から解放するために実験を打ち切るタイミングをいう。)の設定を検討すること。
6 動物実験実施者は,原則として実験期間を5年以内とするよう,動物実験計画を立案すること。

(動物実験計画の実施)
第7条 動物実験責任者は,実験動物を用いた動物実験計画の実施にあたり,あらかじめ所定の様式により動物実験申請を行い,学長の承認を得なければならない。また,実験動物以外の脊椎動物に属する動物を用いる動物実験計画の実施にあっては,予め所定の様式により届け出るものとする。
2 動物実験実施者は,麻酔及び鎮痛並びに適切な保定,実験終了時期の配慮(人道的エンドポイントの設定をいう。),適切な術後管理並びに安楽死処置法の選択等の手段によって,常に動物の苦痛をできるだけ軽減するようにしなければならない。
3 動物実験実施者は,動物実験計画の実施に際して,この規程及び関連諸規則を遵守するとともに,動物実験等の科学的かつ倫理的な実施に関して責任を負うものとする。
4 学長,管理者,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,この規程に定めるもののほか,物理的若しくは化学的に危険な材料及び設備,病原微生物又は遺伝子組換え生物を用いた実験等,安全管理に特に注意を払うべき実験の実施に際しては,関連法令及び本学の関連諸規程に従った適切な施設・設備を確保し,当該諸規程に従って行わなければならない。
5 動物実験実施者は,実験を終了し,又は中止したことにより実験動物が不要となったときは,原則として速やかに苦痛を与えない方法(安楽死処置法をいう。)により処分しなければならない。
6 動物実験責任者は,実験動物を用いた動物実験等の実施状況及び結果について,所定の様式により,学長に報告しなければならない。学長は動物実験申請及び動物実験実施報告を委員会に諮り,当該動物実験計画の承認,変更又は中止を決定する。
7 動物実験申請・届出及び動物実験実施報告に関し必要な事項は,別に定める。

(動物の導入及び順化)
第8条 管理者は,関連法令に基づいて適正に取り扱われた動物でなければ,これを受け入れてはならない。
2 実験動物管理者及び動物実験実施者は,実験動物の受け入れに際して発注条件等と照合し,実験動物の健康状態等と合わせて記録するとともに,必要に応じて適切な検疫又は隔離飼育を行うことにより,動物実験実施者,飼養者及び他の実験動物の健康を損ね,あるいは動物実験等に悪影響を及ぼすことのないようにすること。
3 実験動物管理者及び動物実験実施者は,必要に応じて導入した実験動物の飼養環境への順化・順応を図るための措置を講じること。
4 前2項において,実験動物以外の脊椎動物に属する動物を導入する場合にあっては,動物実験実施者が飼養保管基準の趣旨に沿って行うよう努めること。

(動物の飼養又は保管)
第9条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,飼養保管基準及び指針等に基づいて,飼養保管施設及び設備の維持及び衛生管理を行い,実験動物の健康及び安全の保持に努めること。
2 実験動物の飼養保管施設への収容に際し,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,飼育室への振り分け及びケージ配分について,動物の生理,生態,習性等に応じて適切に行うとともに,適切な給餌,給水,ケージ交換等の飼育管理を行うこと。
3 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,協力して実験動物の導入時から不要時に至る全ての期間にわたって実験動物の状態を子細に観察し,状況に応じた適切な処置を施さなければならない。
4 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,実験動物の飼養に関わる前3項の記録を飼養管理台帳に記載し,管理者に報告しなければならない。
5 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,動物残渣(死体,汚物,使用済みの飼育資材等をいう。)の保管に際しては,悪臭の発生及び病原体による環境汚染等の防止を図らなければならない。

(譲渡及び輸送)
第10条 学長,管理者,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,動物の譲渡に際し,その特性,飼養保管の方法,微生物学的品質等に関する情報を提供すること。
2 学長,管理者,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,動物の輸送(施設等間の自家移送を含む。)に際し,飼養保管基準その他の関連諸規程を遵守し,動物の健康及び安全の確保並びに人への危害及び逸走の防止に必要な措置を講じること。

(標準業務手順書)
第11条 施設等の管理者及び実験動物管理者は,実験動物の飼養又は保管に関する前3条に係る標準業務手順書を作成し,動物実験実施者及び飼養者に周知して,実験動物の適正な飼養又は保管,施設等及び周辺環境への悪影響の防止を図るものとする。

(安全管理)
第12条 管理者は,動物が逸走した場合に備え,予め捕獲方法等を定めること。
2 管理者は,人に危害を与える恐れのある動物が施設等外に逸走した場合は,速やかに関係機関へ通報すること。
3 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者の所属部局の長は,管理者と協力して実験動物に由来する感染症への罹患,咬傷等を予防するために必要な措置及び健康管理を行うこと。
4 管理者は,有毒動物,危険動物又は人への感染性を保持した微生物を投与若しくは保持し,又はその恐れのある動物を飼養又は保管する場合にあっては,人への危害の発生の防止に必要な事項を別途定めること。
5 管理者は,動物実験等に関与しない者が,飼養又は保管している動物に接触することがないよう,必要な措置を講じること。
6 管理者は,地震,火災等の不測の事態に執るべき措置の計画を予め作成し,関係者に周知を図るとともに,かかる不測の事態の発生した場合は,飼養又は保管している動物の保護,逸走による危害防止に努めること。

(教育訓練)
第13条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は次に掲げる事項に関する所定の教育訓練を受けること。
(1) 関連法令,指針等,学内関連諸規程
(2) 動物実験等の方法に関する基本的事項
(3) 実験動物の飼養保管に関する基本的事項
(4) 安全確保及び安全管理に関する事項
(5) その他,適切な動物実験等の実施に関する事項
2 委員会は,教育訓練の実施日,内容,講師及び受講者名の記録を保存すること。
3 動物実験実施者は,実験実施に先立ち,必要な実験手技等の習得に努めること。

(点検評価及び情報公開)
第14条 学長は,次に掲げる事項に関する基本指針への適合性を点検・評価し,その結果を年1回程度公表すること。また,点検評価の結果については学外の者による検証を受けるよう努めること。
(1) 飼養保管施設及び実験室の設置状況
(2) 本規程,関連細則及び飼養保管施設の標準業務手順書
(3) 飼養保管施設の運用状況
(4) 実験動物の導入,飼養又は保管状況
(5) 動物実験計画の審査状況
(6) 動物実験等の実施状況

(雑則)
第15条 この規程に定めるもののほか,必要な事項は別に定める。

附 則
1 この規程は,平成19年4月1日から施行する。
2 金沢大学動物実験指針は廃止する。

附 則
 この規程は,平成21年2月23日から施行する。


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