大学院講義:脳医科学Up-to-dateセミナー (遺伝子改変動物学セミナー)
「レンチウイルスベクターを用いた個体レベルでの 遺伝子機能解析」
伊川 正人 先生
(大阪大学微生物病研究所・感染動物実験施設 准教授)
日時:1月22日(木)17時00分より
場所:医学部F棟1階修士セミナー室
レンチウイルス (LV) ベクターは、非分裂期にある細胞にも効率良く感染できる特徴や、in vivoで遺伝子発現が抑制されにくい特徴を併せ持つ。そのため遺伝子治療のみならず個体レベルで遺伝子機能を解析するツールとしての有用性が注目されている。
我々はLVベクターを精細管内に注入すればセルトリ細胞特異的に遺伝子導入できることや1、透明帯を除去した胚盤胞に感染させると栄養芽細胞系列のみに遺伝子が導入され、胎盤特異的に遺伝子発現させられることを見出した2。これらと治療遺伝子を組み合わせて、精子形成不全による雄性不妊や、胎盤異常による胚性致死を治療できることを報告している。
一方、生殖細胞や受精卵にLVベクターを感染させた場合にはトランスジェニック動物ができる。通常のマイクロインジェクション法 (処理卵の3%程度しか遺伝子導入されない) に比べて、約20%程度と作製効率が高い3。またレトロウイルスベクターと異なりin vivoで効率良く遺伝子発現することから、新しい遺伝子組換え動物の作製法として注目されている。我々の知見を含めたLVベクターを用いた個体レベルでの遺伝子機能解析法について紹介したい。
- Restoration of spermatogenesis by lentiviral gene transfer: offspring from infertile mice. Ikawa M., et al. PNAS 2002; 99: 7524-7529.
- Complementation of placental defects and embryonic lethality by trophoblast cell specific lentiviral gene expressiontransfer. Okada Y., et al. Nat Biotechnol 2007; 25: 233-237.
- Generation of transgenic mice using lentiviral vectors: a novel preclinical assessment of lentiviral vectors for gene therapy. Ikawa M., et al. Mol Ther 2003; 8: 666-673.
尚,本セミナーは医学系研究科脳医科学専攻の「Up-to dateセミナー」として単位認定(0.2単位)を行います。
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