大学院講義:脳医科学専攻Up-to-dateセミナー

(遺伝子改変動物学セミナー)

「中脳ドーパミン作動性ニューロンの発生と分化」

福住 好恭 博士

(Institute of Developmental Genetics, Helmholtz Centre Munich, Germany)

日時:5月7日(金)17時00分より

場所:医学類F棟1階修士セミナー室

中脳ドーパミン作動性ニューロンは主に黒質緻密部と腹側被蓋野に局在している。黒質緻密部ドーパミン作動性ニューロンは背側線条体に投射し、運動機能を制御している。パーキンソン病は、黒質緻密部ドーパミン作動性ニューロンが変性・脱落することによって、線条体のドーパミンが枯渇し、無動、固縮、振戦を特徴とする運動障害が発症する疾患である。一方、腹側被蓋野ドーパミン作動性ニューロンは皮質領と腹側線条体に投射し、感情や報酬系を制御している。腹側被蓋野ドーパミン作動性ニューロンの変性は、統合失調症や薬物乱用に関係すると考えられている。このように中脳ドーパミン作動性ニューロンの発生と分化機序の解明は、パーキンソン病をはじめとする多くの難治療疾患の治療法開発に重要である。近年多数の転写因子やシグナル分子が、中脳ドーパミン作動性ニューロンの発生に関与している事が報告されている。我々の研究室では、canonical Wntシグナルに着目し、中脳ドーパミン作動性ニューロンの発生にWnt1が必須であることを報告した(Prakash N et al., Development., 2006)。本セミナーでは、canonical Wntシグナルの拮抗分子であるDkk遺伝子ファミリーの1つであるDkk3遺伝子の中脳ドーパミン作動性ニューロンの発生における機能解析について発表する。また、再生医療を目的としたC57BL6N系統ES細胞を用いた中脳ドーパミン神経への分化方法とその効率について紹介する。

福住博士は2年前に本研究科で医学博士を取得し,現在ドイツのInstitute of Developmental Genetics, Helmholtz Centerで上記の研究を行っています。今回,一時帰国をされるので,本セミナーをお願いしました。

尚,本セミナーは医学系研究科脳医科学専攻の「Up-to dateセミナー」として単位認定(0.2単位)を行います。

連絡先:学際科学実験センター遺伝子改変動物分野 浅野雅秀
TEL: 076-265-2460, E-mail: asano@kiea.m.kanazawa-u.ac.jp
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