大学院講義:脳医科学専攻Up-to-dateセミナー
(遺伝子改変動物学セミナー)
マウス表現型解析標準化と日本マウスクリニック
若菜 茂晴 先生
(理化学研究所バイオリソースセンター)
日時:1月20日(木)17時00分より
場所:医学類F棟1階修士セミナー室
世界規模の大規模KOマウス作製プロジェクト(KOMP, NorCOMM, EuCOMM)によりマウスの変異体リソース数が飛躍的に増加し,それに続くマウス表現型解析プロジェクトが進行しつつある。しかし表現型に関する情報量が加速的に増加し,これまでの表現型記載の方法では情報の統合が困難となってOmic研究,変異体リソースの検索,ヒトをはじめ異なる生物種の表現型への対応等の面で様々な問題が生じてきた。このような問題に対して研究機関を超えた共通基盤構築の動きが進行し,そのひとつがマウス表現型解析基盤の大規模化,および標準化である。特にEUでは,2006年までのEumorphia(マウス網羅的表現型解析基盤開発プロジェクト)の成果により,マウス飼育方法を含めた網羅的表現型解析SOP (標準作業手順書)の初期バージョンが公開され(http://www.eumorphia.org),さらにこれを基盤としてEuCOMMで作製されたマウスを対象に大規模表現型解析プロジェクトEUMODIC - European Mouse Disease Clinic (http://www.eumodic.org/) が進行している。また,表現型解析における国際連携を促進するため,MRC(英),Helmholtz Zentrum Muenchen (独), ICS(仏),The Wellcome Trust Sanger Centre(英),Jackson研(米),TCP(加)そして理研BRCなどが加わってIMPC (International Mouse Phenotyping Consortium)が発足し,表現型解析アッセイの標準化,SOP,情報フォーマットの標準化,マウス表現型データの統合等について議論されている。我が国では,理研GSC ENUマウスミュータジェネシスプロジェクトの成果を受けて,バイオリソースセンターにて「日本マウスクリニック」(http://mouseclinic.brc.riken.jp/)がスタートし,前述のIMPCに参加しつつ,実験プロトコルの整備,正確なデータ記述法と統計解析システムの開発等より広範囲で詳細なマウス表現型解析システムを構築し,ユーザーが作製した突然変異マウス系統の解析より,各種ヒト疾患モデルとしてのアノテーション,さらに,セマンティックWeb技術に基づくマウス表現型情報を扱うための技術基盤開発などを行っている。本セミナーでは日本マウスクリニックのシステムの紹介と,マウス表現型解基盤の国際連携の潮流について概説し,マウスユーザーへの便宜について解説したい。
尚,本セミナーは医学系研究科脳医科学専攻の「Up-to dateセミナー」として単位認定(0.2単位)を行います。
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