第22回生命工学トレーニングコースセミナー
「マウス・ラット多能性幹細胞を用いた発生工学と臓器再生への応用」
小林 俊寛 先生
(東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療分野 科学技術振興機構 中内幹細胞制御プロジェクト)
日時:11月8日(木)17時00分より
場所:学際科学実験センターアイソトープ総合研究施設 1階会議室
マウス ES 細胞はそのキメラ形成能から、ジーンターゲティング法との組み合わせにより特定の遺伝子を破壊したノックアウトマウス作製を可能にし、個体レベルでの遺伝子機能解析に大きく貢献してきた。一方、マウスと同じげっ歯類に属するラットは、大型で扱いやすく、実験動物としてマウスよりも優れた点があるにもかかわらず、ES 細胞の樹立が困難で、長らくノックアウト動物の作製が不可能であった。しかし、マウスから遅れること約25年の 2008年、特定のシグナル経路を抑える阻害剤を添加した培養法の開発により、生殖系列へも寄与可能なラット ES 細胞が得られるようになった。2010年にはこのラット ES 細胞に対するジーンターゲティングにより p53 ノックアウトラットの作製が報告され、今後、ラットでも逆遺伝学的なアプローチが一層進展することが予想される。
本セミナーではこれらマウスおよびラットの ES 細胞、さらには近年急速な発展を遂げた iPS 細胞、といった多能性幹細胞を用いた発生工学について概説するとともに、我々が取り組んでいるマウス-ラット間の異種間キメラの作製とその臓器再生への応用を紹介させていただきたいと思う。
|