第33回生命工学トレーニングコースセミナー

脳医科学専攻up-to-dateセミナー

「発生工学的手法を駆使したマウス着床前胚の細胞分化研究」

平手良和 先生

(東京医科歯科大学 実験動物センター)

日時:11月8日(火)16時00分より

場所:学際科学実験センターアイソトープ総合研究施設 1階会議室

ほ乳類胚は胎内で発生が進むため、魚類・両生類のような下等脊椎動物と比べその発生を解析するのは一般的に困難である。しかし、初期胚盤胞は受精から3日で形成されるうえ、着床前の段階であるためin vitroで発生させることが容易である。また、着床前胚の研究手法で特徴的なのは、魚類・両生類発生の解析で常用されるようなsiRNA顕微注入によるノックダウンやRNA顕微注入による過剰発現が可能なことである。私はこれらの発生工学的手法を習得することで、初期胚盤胞の細胞分化研究に取り組んできた。   

着床前マウス胚の初期胚盤胞は、胚の外側に位置する栄養外胚葉と、その内側に位置する内部細胞塊とで構成されている。この2つの細胞系譜への分化はHippo経路によって制御されている。Hippoシグナルの状態は内側と外側の細胞とで違いがあり、内側では強いシグナルが起こるが、外側ではほとんど起こらない。その違いが異なる転写因子群の発現へとつながり、内外の細胞を異なる細胞系譜へと導いていく。しかし、なぜHippo経路は内側だけで活性化されるのか、その位置特異的な活性化の仕組みは未解明のままであった。私は、Angiomotin(Amot)ファミリーの分子に注目することで、内側特異的なHippo経路活性化と外側細胞でのHippo経路抑制機構を包括的に明らかにした。

本セミナーは初期胚盤胞研究についてのストーリーを中心としつつ、発生工学を習得する過程で直面した困難や失敗談を交えてゆるく話をすすめていきたい。本セミナーがこれから発生工学の習得を目指す方々の一助となれば幸いである。

連絡先:学際科学実験センター遺伝子改変動物分野 大黒多希子
TEL: 076-265-2460, E-mail: tdaikoku@kiea.m.kanazawa-u.ac.jp
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本セミナーは,脳医科学専攻up-to-dateセミナーとして単位認定(トレーニングコース受講生を除く)