遺伝子トラップで単離した発生制御遺伝子の解析

 

 遺伝子トラップは,新規遺伝子を単離し,同時にその遺伝子の発現をモニターし,更に遺伝子変異マウスを得ることができるたいへん優れた方法である。しかし,どのような遺伝子がトラップされるかは偶然によるところが多く,自分の目的とするものに焦点を絞るが難しいという欠点がある。私たちは,レチノイン酸などの液性分化因子でトラップしたES細胞をあらかじめ選別する方法を用いて,細胞認識に重要な受容体型チロシンキナーゼEphA2遺伝子の変異マウスの作製に成功し,EphA2は尾部の脊索形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。更に、他のEph遺伝子KOマウスと交配することにより,腎臓発生にも重要な役割を果たしていることを明らかにしつつある。また,アデノウイルスベクターを用いて,発生制御に関わる転写因子によって制御される遺伝子をトラップする新しい方法を開発した。この方法で単離したWtapは中胚葉形成に必須であることを明らかにし,HP1γは生殖細胞の形成に重要であることを明らかにしつつある。

1) Naruse-Nakajima, C., Asano, M. and Iwakura, Y.: Involvement of EphA2 in the formation of the tail notochord via

interaction with ephrinA1. Mech. Dev. 102: 95-105, 2001.

2) Naruse C, Fukusumi Y, Kakiuchi D, Asano M. A novel gene trapping for identifying genes expressed under the

control of specific transcription factors. Biochem Biophys Res Commun. 2007 Sep 14;361(1):109-15. Epub 2007 Jul 10.

3) Fukusumi Y, Naruse C, Asano M. Wtap is required for differentiation of endoderm and mesoderm in the mouse

embryo. Dev Dyn. 2008 Mar;237(3):618-29.

トラップした遺伝子の初期発生における発現パターン

E6.5

E7.5

E7.5

E8.5